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2005.11.02

〜アメリカ合衆国 表の顔・裏の顔〜

 アメリカから帰国したのでオートアップ誌での連載が打ち切りになって、最終回用にしようと思っていた原稿が掲載される事が無くなったので、こっちに未編集Ver.で載せさせて頂きます。

 

 僕は2003年に移民としてサンフランシスコにやってきた訳ですが、70年代生まれの僕にとってアメリカは子供時代からの憧れの国であり、その国に移民として入国し、空港を出て強烈なカリフォルニアの日差しを浴びた時には、言葉に出来ない感動があったのを憶えています。

 ですがこの度、永住権を返還して日本に帰国する事となりました。

 新移民としての諸手続きを終え、入国後最初の数ヶ月は毎日が新鮮で刺激に満ち、かつ観光都市でもあるサンフランシスコの人達は外国人である僕に対しても優しく、景観の美しい場所や観光として訪れるには素晴らしい名所等も豊富にあり、観光で来るならば、そして日が暮れてから危険な地区を歩かなければ、ここはまさにパラダイスでしょう。


 
しかし僕が入国してから数ヵ月後、ブッシュ政権のイラク侵攻が現実味を帯び始めた辺りからでしょうか?少しずつ、外からでは判らないこの国の負の面、裏の顔が見え始めたのは。


 政治的には新保守主義派と言われる一派の台頭。
 国家予算の大部分が軍事費と経営難に陥った大企業救済に使われる、軍産複合体と企業連合に牛耳られた連邦政府。経済面も「世界経済を牽引する」と言われるアメリカの個人消費も内情は借金まみれで、カードでの多重債務が大学での授業で課題として取り上げられる程。また地球の裏では今日の食事にも事欠く子供がいるというのに、この国では総人口の約6割がカロリー摂取過多による肥満に悩み、肥満児童の増加が社会問題化している程です。


 
生活面では脆弱で老朽化したインフラ、低所得者に厳しく高額所得者に優しい税制度、必要性が唱えられながらも一向に実現の兆しすら見えない医療の国民皆保険制度。
 最極貧層にしか用意されていない社会福祉・公的扶助。「人の役に立つ仕事がしたい」と言う希望があり、社会福祉士として働きたかった僕にとって、この国が本心では社会福祉をしようとはしていない現実が見えた時、この国に絶望を感じたのは事実です。

 また全ての面でアメリカ国内では最もリベラルと言われる北カリフォルニアでさえも、まだ色濃く残る人種的偏見や差別。 


 帰国を決意したある日、連載の最終回を「他人種混在のアメリカ」で希望的な終わり方にしたくて、多文化・他人種混在の写真が欲しくて街を歩いていた時の事です。

 ビジネス街から街の中心部を経て自分のアパートまで歩いたのですが、ホワイトカラーのビジネスピープルは白人が殆どで、そこにアジア系が多少混じる程度。
 アフリカ系のホワイトカラー労働者を見る事はほぼ皆無でした。これが街の中心部を少し離れて夜は危険と言われている辺りに来ると、今度はアフリカ系の比率が急上昇。
 着ている服の素材感で、彼等の社会的地位を想像する事はそう難しい事ではありませんでした。
 さらに街を走る車も、高級車を運転するアフリカ系は「誰かお金持ちのお抱え運転手」以外ではほぼ皆無で、平日の昼間に街を走る自家用車、ドライバーは白人女性が大半を占め、アフリカ系は商用車で見かける程度でした。


 小説家のジーン・ブリューワーが、作家で映画監督でもあるマイケル・ムーアが、知人でボスニア難民のルーディが、電車で話しかけてきたチャイニーズアメリカンのおばちゃんでさえも、この国を「強欲で残酷な(人達が支配する)国」と言い、企業連合や特定の利益団体が政治に深く食い込み、自分達に都合がいいようにルールを捻じ曲げ、作り変え、結果、一部の富裕層だけが富を独占し、中産階級層は崩壊、経済格差が広がり、大多数の貧困層が挫折と閉塞感に満ちた、国家全体が危険で不安定な状態に向かっているようにも感じます。


 世界中全ての民族・文化が共生するこの国は、未来世界のシミュレーションだとも言われますが、
1割の金持ちが9割の貨幣を独占し、残った1割の貨幣を9割の貧困層が奪い合うこの国は、独占資本主義の最終進化形なのかもしれません。


 
日本では昔、木川田一隆氏(元・東京電力社長/会長)のような「企業には社会的責任がある」という修正資本主義を唱えた方がいましたが、アメリカでは「利益こそ至高」、「利益が王」と言う思想があるだけで、企業の社会的責任などどこにも見受けられません。


 
移民局からグリーンカードが送られてきた時、カードと共に「アメリカの為に働け」と書かれた紙が同封されていましたが、僕が子供の頃から憧れた『アメリカ合衆国』は既に何処にも無く、そこには強欲で残酷な『利益至上アメリカ』、『拝金主義アメリカ』があるだけでした。

 幸か不幸か、僕にはそんな国の為に使う時間も労力も持ち合わせはありません。

 だから永住権の事も諦めて、生まれた街に帰ります。


 これが原文の全文です。移民ビザで渡米した日本人が、現実のアメリカに絶望するお話でした。

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コメント

ったく何だよ。
そんな現実を見たぐらいで帰ってきたのかよ。
アメリカが自分の理想じゃないから帰ってきたんだろ??
甘すぎるだろう。
金持ちと貧困層、人種差別とブルー/ホワイトの違い・比率?あんたはアメリカをなんだと思ってたんだ?
「また全ての面でアメリカ国内では最もリベラルと言われる北カリフォルニアでさえも、まだ色濃く残る人種的偏見や差別。」
誰かに言われた事をそのまま、鵜呑みにする
あんたは馬鹿か??
お前みたいな、半端者が世の中を半端にするんだよ。
世の中、平等じゃないっつうの。
お前の思うような世の中にしたいなら、
その辛い現実の問題に一つ一つ立ち向かうべきだろう。

投稿: 5150 | 2009.01.23 10:09

5150さん>
グリーンカードを得ると言う幸運を得ながら、それを自らの意思で放棄した僕は恐らく、他人から批判されてしかるべきなのでしょう。
そして現実に挫折して帰国した僕を口汚く罵るあなたはきっと、異国で現実と闘って勝利を収めたか、現実社会で一定以上の地位を得た方なのでしょう。

ただ、他者への攻撃を匿名で行うという、自分は絶対に傷付かない、安全な位置から他者を切り付けるその姿勢は、醜悪でもあります。
「現実に文句や愚痴を言うだけで何もしない。現状が気に入らないのならそれを変える努力をしたらどうなんだ?」
と言う主張は、一見正しそうにも見えますが、行動して物事が解決するのは少年マンガ的な世界だけです。狡猾な大人達が蠢く、政治と経済と文化と人種と宗教と思想・信条が複雑に絡み合った現実世界では、僕はアメリカが抱える問題にアメリカの為に立ち向かおう、という気は起きませんでした。

投稿: mizzie | 2009.01.24 00:41

ときどき拝見していたのですが、はじめてコメントします。

5150さんのコメントは、一種の「喝」という感じもしますから、内容自体には意見はありません。このくらいの気概のある男、私は好きです。

が、mizzleさんがご自分で下した判断なんだから、アメリカ脱出の件、それでいいじゃないですか。
日本には他国にはおそらくみられないすんばらしい言葉があります。
「負けるが勝ち!」
戦う運命の人間もいれば、かわす人間もいるのが世界の常。アメリカが嫌ならさよならしてオッケーでしょ〜!
mizzleさんはアメリカ人じゃないんだし、日本もあれば他の国もある。あなたのいるこの場所が、世界の中心なんですよ。イエイ!

お仕事で大変みたいですが、夢を諦めてはダメ! 私もお金はないけど、絶対に夢を叶えて自分の人生を面白いものにしてやる、と思ってますよ。一緒に頑張りましょう!

投稿: kaliningrad | 2009.01.26 15:46

kaliningradさん>
こんにちは。いつも読んで下さって有難う御座います。
さて、上の5150さんの件なんですが、アクセス解析で辿ると、この方はコメントしてからは一度としてこのブログを訪れてはおらず、何かの偶然でここに訪れ、通りすがりに悪態をついていっただけの人みたいです。
まぁ、ネットの世界にはそんな人もいるって事なんでしょうね…。

投稿: mizzie | 2009.01.27 23:36

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