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2006.03.09

拘束初体験

 私の職場では、と言うか現在は全ての医療機関、高齢者施設では、患者や入所者に対する身体拘束は禁止されている。統合失調症や中程度以上の認知症で、安全の為には止むを得ない場合でも、原則的には身体拘束をしてはならない。
 それらもあって、私の職場では新人研修の一環として、「身体拘束実体験」というのがあり、今日、僕もそれをする事になった。

 4人部屋の空きベッドに横になり、拘束具で両腕を身体に触れる事が出来ない位置に、しっかりと縛り付けられる。
 ベテラン看護士に拘束してもらっている時に聞いたのだが、精神病院で働いていた事もあるこの方の話では、昔は身体拘束は、特に精神病院では普通に行われていたらしい。確かに、統合失調症で自傷・他傷の危険性がある患者や、高度の認知症で精神余命が尽きてしまったとしか思えないような人で、体中を不随意に掻きむしり続けている場合など、放っておけば誰かが、自分自身が、全身血まみれになりかねないのだから、拘束したくなる時もあったのかもしれない。
 身体拘束についてのレポート提出期限が明日だったので、仕事を終えてからそれをやっていたのだが、最初の数十分は問題が無かったのだが、業務で職員が頻繁に入室してきたり、面会のご家族がいたりする日勤帯と違い、夜勤帯の時間にベッドで1人、身動きが取れない状態でじっとしているのは、やっぱりちょっと寂しい・・・。

 また、動かそうと思っても拘束された紐の可動範囲以上は動かせない上に、その可動範囲が身体に届かないので、それ自体がストレッサー(ストレスの原因)となって、イライラしてくる。こっちは身体拘束体験としてやっているので、「動けない」事を自覚し、そして最初に知らされた時間が過ぎれば、それから開放される事が判っているので耐えられるが、何も知らされずにいきなり身体拘束をされたら、そりゃあ誰だって物凄いストレスを感じるであろう事くらいは、容易に想像が出来る。

 そんな事を考えながら、大部屋で拘束されたままベッドに寝かされていて、一つ気になる事があった。4人部屋であるここには、四肢麻痺・発語無し・生活全介助の方と、寝たきりで認知症がかなり進んだ方、そして比較的自立度の高い、情動面にも全く問題のない方がいるのだが、この、認知症の方が発する独り言がかなりやかましい。
 言っている内容が統合失調症患者の様に脈絡が無く、話があっちに行ったりこっちに飛んだり、時間軸と空間軸がバラバラな事を始終言われているのだが、それは聞いていて気持ちの良いものでは決して無い。

 この部屋にいる、心身の状態が最も良好な方は、リハビリで身体機能も回復途上にあり、御家族もかなり頻繁に面会においでになる事もあって、精神面も良好なのだが、隣のベッドに寝ている人が、訳のわからない事を始終言い続けているこの状態に、正直な所、心配になった。

 身体拘束体験で、身体拘束の問題点だけで無く、多様な症状の患者を一つのユニットで一緒にさせる事の問題点も見つけてしまった。そんな身体拘束体験でした。

 あれは部屋を移してあげないと可愛そうだよなぁ。
 折角元気になって来てるのに・・・。

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