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2006.03.10

乱反射


 この日は、業務が「入所者のリハビリ室への送迎」担当になっていた。
 リハビリを受ける人が少ない曜日でもあったので、全員をリハビリ室へ連れて行った後、通常業務に戻り、リハビリ送迎担当者に割り当てられている業務も問題なく終えた。そして、昼食前にリハビリの終わった方達を部屋へと連れ帰る。自力で車イスからベッドに移る事が可能な方は皆無だが、移動全介助な方もいれば、半介助でも大丈夫な方もいる。効率にだけ的を絞って考えれば、全介助で私が抱え上げてベッドに寝かせてあげればそれでいいのだが、それでは機能回復訓練をしている意味が無いので、一人一人異なる介助度合いを考慮して、可能な限り自力でして頂く。
 この、『一人一人異なる・・・』と言うのが中々に曲者で、例えば言葉掛け一つにしても、ある人は陽気に受け入れてその言葉で励起されるのに、別の人はそれを自虐的に解釈し深く傷付く。介助にしても、ある人は必ず特定の場所を支えてあげなければならないが、別の人はそこに触れられる事をとても嫌がる。業務の流れは効率的・画一的に進められるが、個々人への応対に同じ物は一つとして無い。施設として全員に同じサービスを提供しながら、各個人毎に異なる対応。この辺りが施設介護のややこしさでもあるのだろう。
 通常業務が比較的穏やかに進んだこの日は、特に時間に追われる事も無く、リハビリを終えた人から次々と部屋に連れ帰り、ベッドに寝かせてまたリハビリ室に戻る。というのを繰り返していた。そして、午前のリハビリ予定者最後の方を部屋に連れ戻し、リハビリを終えた方は皆が多少はそうなのだが、この方もリハビリ前とは明らかに異なる、身体機能の変化(回復)を感じさせる動きがあったので、車イスからベッドに戻る時、いつもの様に声掛けをして、しかし何も介助をせずに、しばし様子を見てみた。
 一呼吸置いて、「はい。じゃあ立てってベッドに戻りましょうね。」の声掛けに、この方は自力でフットレストを上げ、車イスから立ち上がり、自分の動きを確かめるようにゆっくりと、しかし介助無しでベッドまで戻られたのだ。
 「あっらー、○×さん全部自分で出来たやいかー!!そこまで出来るがをはじめて見たちやー。僕がここで働き始めてからもどんどん良ぅなりゆうねぇ。」
 僕からのその言葉に、その方は少し照れながら、しかし嬉しそうに返事をされ、その日は一日ニコニコと過ごされていた。

 僕の目指す介護はまるで太陽の様に、誰にでも平等に暖かく。
 しかしその輝きは、各個人毎の症状に、またその進行度・改善度毎に変化して、まるで水面に乱反射する日差しの様に。

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