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2006.05.17

心臓を貫かれて

 ある程度仕事にも慣れてきて、勤め始めの頃よりは幾許かはマシ、って程度には仕事を進められるようになってきた。僕は相当に運がいい様で、勤め始めの頃には絶対にハンドル出来なかっただろうな。ってぐらいに忙しく、援助困難な方が増えた昨今だが、仕事の要領が良くなった分で、なんとかそれらをこなしている。
 ただ、業務の優先順位を見極められる様になった分、胸が痛む事が確実に増えた。
 重要度の高い業務の最中に、重要度の低い事例で呼ばれたそれを先送りにする時や、時間で区切られた業務で、時間内に終えられなかった方に対して、「もういいですか?」と尋ねる時、僕はいつも胸に痛みを覚える。
 それは時として、心臓をえぐられるような痛みを伴う時もある。

 様々なタイプの患者がいる我が職場にも、当然のように、自立心の強い方と依存性の強い方がいる。そして後者は、物凄く頻繁にナースコールで僕等を呼び、そして駆け付けると本当に些細な、どうでもいいような事と言う場合が殆どだ。

 「出来る事は手伝わない」

 は、この業界では鉄則だと思うが、自立心とは遠い地平に位置するそれらの方々は、どんなに些細な事でも介護者の手を借りようとする。
 呼ばれて出向いてもそういった要望だった場合は、こちらは決して手を出さず、自分でやってもらうように説明する。すがる様に懇願するそれらにも決して応えず、自分でやるように説くその光景は、残酷ですらある。

 でも、そういった事例ならまだいい。

自分の事が一番嫌いになるのは、重要度の高い業務に係わっている時、ナースコールに応えるとそれは緊急度・重要度の低い事で、
 「只今○×をやっている最中で御座いまして、あと○分程したらお伺いしますから、それまでお待ち頂けますか?」
 と言って、その事例を先送りにする時だ。
 もちろん、緊急度や重要度が判別できない時はそのまま駆けつけるが、そうでない、要望の内容がはっきりしていて、それが緊急度・重要度の低い物であれば、それは確実に先送りにされる。
 「頂けますか?」と尋ねておきながら、その問いには拒否を受け入れる余地が無いのだ。

 勤め始めの頃は、僕はそれらにもマメに応じていた。もちろん、出来る事は手伝わないが、呼ばれたら即応していた。そしてそれは職場の先輩達からのクレーム対象となり、かなり強く非難された。「優先度の低い事にいちいち関わるな」と言われて。

 胸が痛む事はまだある。

 「~分まで」と時間が区切られた業務で、時間がギリギリになった時に「もういいですか?」と聞く時だ。
 そう聞かれる方だって、周りが次に向けてバタバタと動き回っている状況でのそれに、「まだです」が受け入れられる余地が無い事など理解しているのだろう。
 入浴介助で体をこすってもらっている時、そう聞かれて「いいから血が出るまでもっとこすって下さい」と言う人にはまだ会っていない。
 食事介助にしたって、食べる速度なんて百人百様なのに、散々急かされた挙句、時間が迫ったからと食事を途中で中断させられてしまう。
 「もういいですか?」と尋ねる時、僕はいつも、胸に痛みを覚える。
 本当はもっと満足を提供してあげたい。次の業務なんかすっとばかしてゆっくりと入浴させてあげたり、ゴハンを食べさせてあげたい。でも施設介護はチームワークだ。僕がそれをやれば、あっという間に組織からはじき出されてしまうだろう。


 ああ、また誰かが僕を呼んでいる。
 判ってる。あの人達はきっと寂しいんだ。誰かに関わっていて、側にいて欲しいんだ。だから、どうでもいい事で呼びつけたり、駆けつけても何の為に呼んだのか言わなかったりするんだろう。

 右往左往しながら朱に交わって来た昨今、
 焼きつきそうなっている自分に気付く事が増えた。



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コメント

mizzieさんのブログを知ったのも同じ介護職だったのがきっかけ・・・はじめは記事を拝見させて頂くたびに「このひとはこんなに根詰めて仕事して、燃え尽きるんじゃなかろうか?!」とハラハラしてました。今日の記事を読んで少し安心しました。「施設介護はチームワーク」の言葉に、職場のなかでの自分のポジションを確立されたんだなぁ・・・と感慨深く思いました(って、あんたは母ちゃんかい!)
今私たちが接している世代にはこれ以上のことは出来ないのかもしれないけど、ずっと介護の仕事をしていけばそれなりに出世して、こんな歪んだ現場を変えていけるのではないか、その頃に要介護者となっている人たちを少しでも救えるのではないだろうか・・・と、最近思っています。
現場を変えるには、やはり出世するしかない・・・ってのも、前時代的な気がしますけどね。

投稿: hana | 2006.05.17 17:31

hanaさん>
実際に高齢者を対象に仕事をしているという実感を味わうには、最前線に居続けるしかないのですが、この間違いだらけのシステムを変えるには、出世するしかないだろう。と言う実感は僕にもあります。

悲しい現実ですが、国家政策として福祉は常に、予算面で最後に回される分野なので、現状の日本が抱える国際・経済問題を解決しない限り予算面での支援は望めませんから、後はこちらが知恵を出し合うしかないだろうな・・・とも思っています。

投稿: mizzie | 2006.05.17 19:39

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