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2006.05.31

本心をさらす認知症

 心理学の世界にはまだまだ解明されていない所が沢山あって、十年前に言われていた事がその後の新たな発見で覆されて、とかがあるみたいだけれど、それは認知症に関しても同じ事が言えるみたいだ。
 認知症は、そのケースの種類と数が増えて、否応なしに理解が進んだ面もあるのだろうが、ちょっと前に定説とされていた事が全く使い物にならない理論だったり、全く無知・無理解だった領域が幾つも解明されたりしている。

 例えば、昔は「認知症が進むのは精神的に子供になって行くようなものだ。」とか言われていたそうだが、どうやらそれとは少し違うらしい。と言う事が判ってきたらしい。
 真っ白の状態から様々な知識や経験を獲得していく子供と違い、過去に獲得した知識や経験、そしてそれらから得た生きる力、自分を守る盾を、失っていく過程でもある認知症は、人生を上手く生きる為に必要だった、「本心を隠す」と言う技術を失わせ、言ってしまえば真っ正直な人格に変えてしまうらしい。

 本心を隠さない、抑えない、我慢しない、とても判りやすい人になってしまうのだそうだ。

 本心を隠す事をしないので、心に思い描く自分と現実の自分の乖離によるストレスが、妄想や攻撃や俳諧といった、問題行動への逃避となってダイレクトに現れるらしい。
 この状態を周囲の家族や介護者が上手く受け止め、当人がその状態を受け入れる事が出来ると、とても落ち着いた状態になるらしい。

 これはある意味、末期ガン患者の初期に似ているとも言えよう。

 不安→怒り→取引→抑鬱→受容

 と言う心理的変化を遂げる末期ガン患者だが、認知症の場合、不安と怒りが妄想や俳諧や攻撃になって現れ、取引の過程を経る事無く(経ているのかもしれないが・・・)受容へと至る。
 この、「受容」の段階になった認知症高齢者は皆、実に気持ちの良い笑顔を見せるのだそうだ。

 人生最後の時を笑顔で送られる、そんな介護を僕は提供出来ているのだろうか?
 これまで何人か見てきた認知症高齢者は皆、医療介護施設からグループホームや特養、老健へと移っていった。残っているのは延命治療で生命維持しているような人ばかりだ。

 移っていった彼女達が皆、そこで笑顔で日々を送っている事を願わずにはいられない。



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コメント

私も、最近は認知症について、色々な読み物や番組を見ていて、多少なりとも知識が増えてきました。
確かに、認知症の方々は、一見分かりにくいようで、とても素で生きているように思います。

この前も、デイで徘徊が酷く、ずっと険しい顔をしていた利用者さんがいました。
よくよく調べてみると、名札(バッチのように服につけているもの)の針が、
外れた状態でポケットに入っていて、
その針が太股に当たって痛かったようなんです。
名札をポケットから出すと、その利用者さんは落ち着きました。

でも、ケアという面で考えると、
本当に、その方にとって最良のケアが自分にできているのか、
改めて自分に問いながら、これからも考えていきたいと思います。

投稿: ガルボ | 2006.05.31 21:14

まだ思いを語れる程経験値はないのですが、痴呆のお話、わかるような気がします。
不安が常にあり、10秒と空けずに何度も何度も同じことを繰り返し聞いて来られる利用者さんは、通所リハビリのデイフロアではまさに職員泣かせな存在です。
実際、彼女の問いかけに嫌な顔をしたり、無視してしまう職員がいるのも事実です。
他の業務に差し支えが出るのは承知の上ですが、彼女の繰り返しの問いにこちらも初めて伺ったようにお応えしている私です。
彼女に笑顔が浮かんだのを確認し(安定の証)、業務へと戻る・・・そんな毎日です。

あるブログで「認知症の対応に正解なし。」と書かれてありましたが、今の所、笑顔に勝るものはなし。と考えています。

笑顔は、職員に欠かせないものであり、そして、利用者さんにこそ大切なものだと思います。

投稿: 花梨 | 2006.06.01 00:22

認知症の方々に対して、決して満足のいくケアを提供出来てはいない僕にとって、皆さんの反響は嬉しくもあります。

ガルボさん>
認知症のように、精神面以外が良好な方はその思いを言葉にして表出する事が無いか、あっても感情的過ぎる分、ケアする側の観察力と、多彩な対処能力を要求されるみたいですね。
それらのスキルを上げる為には、とにかく経験を積むしかなさそうですけど、お互い頑張りましょうね!!

花梨さん>
はじめまして!!
重要度の高い業務に追われている時などに、問い掛けを逸らして逃げる事もある僕は、働きながら胸に痛みを覚える事が多々あります・・・。
利用者さんの笑顔を引き出す為には道化役をする事もある僕ですが、こちらの笑顔を利用者さんが、「嘲笑われてる」って思うような職員にだけはならない、笑顔のTPOを使いこなせる、そんな職員になりたいと考えています。

投稿: mizzie | 2006.06.01 01:36

mizzieさん、こんにちは。
この記事、まさに今の母の状態ですよね?

「受容」・・・
母は今の自分を受け入れたということですよね。
落ち着いたいい笑顔なんです。
穏やかで。

穏やかな笑顔は、不安や怒りとは遠いので、
私はとても安心します。

投稿: えびすけ | 2006.06.17 11:08

えびすけさん>
TVで認知症について特集をやっていた時に見たんですけど、この「受容」の段階に至った方々、ほんとうにステキな笑顔をされていたんですよ。
人生の終盤で、そんな笑顔でいられる、そんな時間を提供出来る介護者になりたいです。

投稿: mizzie | 2006.06.18 02:19

認知症の本を読んで、ここにたどり着きました。

認知症とは脳の何かのタガが外れるのでしょうね。

それをうまく受け止めてあげる環境が、私が認知症になったときに、確立されているとありがたいのですが。

投稿: 本のソムリエ | 2011.02.15 21:09

本のソムリエさん>

医学の進歩により、先進国では寿命が劇的に伸びた結果、認知症はサンプル数が増えた事もあって劇的に解析が進みつつあります。
治療薬や治療法、医療・福祉の対処法も数年前とは比較にならないくらいに進歩していますし、今も進歩し続けています。
そう遠くない未来に、認知症になっても安全に老後を迎えられるレベルまで治療技術とリハビリ技術、介護技術は進化すると思っています。

今後のこの国の市民の政治意識の高まり具合と、選挙の結果として導き出される政策の在り方次第では、そういった進んだテクノロジーやメソッドが一部富裕層や特権階級層しかアクセス出来ないものとなり、多数派市民は「生かせるだけ」の扱いしかしてもらえなくなるリスクも否定出来ないのですが…。

投稿: mizzie | 2011.02.19 23:08

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