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2006.08.11

ゲド戦記

 映画の『ゲド戦記』を観てきた。

 原作がとても面白い作品だったので、ジブリがゲドをやる。と聞いた時、それなりに期待もしたし、原作への思い入れがある分、2時間のエンターテイメントにまとめる事には少し不安もあった。

 あの長編の原作を、スタジオジブリが2時間でどうやってまとめるのか、それを観たいという思いもあり、仕事が休みだったその日、何年ぶりかに映画館に足を運んだ。

 作品としては、とてもよく出来ていると思う。

 監督が伝えようとしているメッセージもきちんと伝わってきたし、感情移入も出来たし、思わずウルウル来ちゃいそうな所もあった。

 ただやはり、2時間で『ゲド戦記』の世界を全て伝える事は出来なかったようだ。原作の長さは『ロード・オブ・ザ・リング』と殆ど同じくらいの大作なんだから、それを2時間で全て伝えようなんてのは如何にジブリと言えども不可能だ。

 映画の『ゲド戦記』は、小説の『ゲド戦記』から登場人物と世界観を借りて、別の物語を作っている。くらいの気持ちでいていいと思う。

 原作は本当に面白く、深い作品なので、映画をきっかけに小説を手にとってくれる人が一人でもいれば、それで充分だ。
 少なくとも、小説版『ゲド戦記』が持つ、メッセージの幾つかは伝わっていると思う。

 原作者のアーシェラさんはとても意図的に寓意的に物語を書く方なので、ゲド戦記に登場するキャラクターが象徴しているであろう物事の背景なんかを考えると、とても深いし考えさせられるし読み応えがあるので、映画版で面白いと思った人は、ぜひ小説版も読んでみて欲しいと思う。(ちょっと長いけど)

 映画版はジブリの作品だから、小さい子供も観る事を前提にしているからだと思うが、原作で書かれている事の幾つかは映画では語られなかったりもするが、原作で書かれたそれには、色々と考えさせられたりもする。

 例えば、映画版ではテルー(テハヌー)は比較的綺麗なキャラとして描かれているが、原作のテルーはその顔に他人が思わず目をそむける様な醜い傷を持ち、その傷は幼少時に親からレイプされ、生きたまま焚き火に投げ込まれて殺されかけた時に出来た傷で、その時死に掛けていた所を偶然通りかかった村人に助けられ、そしてテナーに引き取られるという設定になっている。

 そんな凄惨な過去を持つテルーが、その心の傷の深さと顔に負った傷の醜さ故に、ごく一部の人にしか心を開かず、しかし魔法使い以外で唯一のドラゴンと言葉を交わせる人間となり、そして物語の最後では、どのドラゴンよりも美しい金色の竜となり、風と自由を選んだドラゴンと共に人間界から去っていくというのは、ある意味象徴的ではある。

 また原作のテルーに、当時アメリカで問題になっていた、チャイルドアビュース(児童虐待)の被害者が重ねられているであろう事は、想像に難くない。

 ゲドだって原作では顔の傷はもっと醜く描かれていて、そのゲドが青年期に負った顔の傷もまた、何かを象徴しているといった感じで、この作品はシンボリズムで満ちている。

 そんな感じで、原作には映画が描ききれなかった、描かなかった事が沢山ある。『ゲド戦記』自体が大人が読む事を前提に書かれたファンタジーなので、ある程度の人生経験を重ねた大人が読むと、それなりに考えさせられる事が沢山ある良書だ。

 映画版のゲド戦記はその作品性だけでなく、小説版のイントロダクションとしても、とても良く出来ている。
 ジブリの作品は海外でも高く評価されているので、あれが伝えようとしているメッセージが、アメリカでも広く知られるのだと思うと、期待をせずにはいられない。

 個人的にはスタジオジブリには、向山貴彦氏の『童話物語』を映画化して欲しいんだけど・・・。


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この記事がイマイチでも原作のゲド戦記は面白いよ!

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コメント

子供(・・・でもないか?!)の頃に読んだだけの「ゲド戦記」ですが、ジブリがやると知って・・・ちょっとがっかりしたhanaです。なぜなら最近のジブリ作品は「教育テレビ」っぽくなり過ぎてるから。出てくる女の子がみんな「男性の理想像」っぽく見えるのは穿ちすぎでしょうか。もっと人間の汚さや腹黒さ、リアルな兵器が見たいよぅ、昔のジブリ作品のように・・・。

それはまぁおいといて、映画のほうは見ないけど(映画をみるのは苦手)、原作のほうはもう一度読み返してみたいと思います。

投稿: hana | 2006.08.11 07:41

hanaさん>
僕の中でのジブリ作品のベストは『天空の城ラピュタ』なんですけど、宮崎吾郎監督、これまでのジブリ作品から外れる事無く終わっちゃいましたが、僕としては、原作に忠実なゲドとテルーを描いて、ゲド戦記を知らない一般大衆達の度肝をぶちぬいて「宮崎吾郎カラー」を出して欲しかったです。

投稿: mizzie | 2006.08.11 22:30

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