« やっぱりさ、お前等今すぐ独立しろよ | トップページ | 遺伝 »

2006.08.25

非服従

 最近入所してきたばあさんは、めっちゃガンコだ。

 自分の中で「No」と判断した物は、絶対に受け付けない。

  とにかくこのばーさん、介護士の思惑通りになんか絶対にならない、めちゃくちゃ手の掛かる利用者さんなんだけど、俺はこのばーさんのその気位の高いトコが大好きだ。

 これがただ単に偏屈でひねくれてて我儘なだけなら、働いてるこっちだって笑顔浮かべながら(こんのクソババめ!)位は思うんだろうけれど、このばあちゃんが受け付けない事物は物凄く限定されていて、それ以外のことにはとても素直で、協力すべき所ではとても協力的だ。

 このばあちゃんが協力的な場面ってのは、それはトイレ誘導だったり、夜間のオムツ交換だったり、体位返還(って返却してどうするよこのバカ日本語ソフト!!変換だよ!)とかそういった事柄には、とてもとても協力的で、こちらへの態度なんかは可愛らしかったりもする。

 でも、それ以外の事だと、他の入所者を基準に考えたら物凄く些細な事でも、このおばあちゃんの中で「非」と決断が下された物は断固として拒否すると決めている様で、何があろうと絶対に受け付けない。こちらがあの手この手を尽くし、どんなになだめすかしても、それが命に関わると言う事が相手に判っている事でも、断固として拒絶する。

 ADL等に関しては自力で立つ事が出来ないが、痴呆もなく意識もはっきりしていて、精神面は至って良好な方なので、こちらもある一定以上の無理強いをする事は出来ないしやらない。

 例えば水分補給。

 プランでは一日1000ccを目安に。となっているが、病院から出るお茶もジュースも全く受け付けない。

 とにかく何を勧めても、

 「いや」

 「いらん」

 としか言わなくて、ほっといたら脱水症状になって点滴しなきゃ!だよ。
 ってトコまで拒否が続いていた。そんなある日、主任が職員用のコーヒーを試しに出してみたら、コーヒーが好きだった様で、それをゴクゴクとおいしそうに飲み干し、以後、コーヒーだけなら飲んでくれるようになった。しかしそれ以外の飲み物は、こちらが何を出しても完全に拒否だ。

 そして休み明け、出勤したらその方にだけ、3食にコーヒーが付いてくるようになっていた。

 専門用語で言う所の“全制的施設”に限りなく近い我が職場において、その身を犠牲にしながらも非服従を貫き、このばあちゃんは権利を勝ち取った。

 介護士の思惑通りになんか絶対にならない、このばあちゃんが俺は大好きだ。



非暴力非服従は権利獲得の最強アイテムだよな。って思うあなたはクリックしてね。
http://blog.with2.net/link.php?268283

|

« やっぱりさ、お前等今すぐ独立しろよ | トップページ | 遺伝 »

コメント

コーヒーばあちゃんですか。
私も将来駄々こねてみようかな。コーヒーじゃなきゃ飲まないよー!なんて。
私は気が弱いからダメだろーなー、むむ。

投稿: りえぽん | 2006.08.25 20:13

りえぽんさん>
このおばあちゃん、「他人に介助されて」ってのがイヤみたいで、一人の時にチラ見したら、そっとお茶飲んでました。
でも看護士か介護士が視界内にいると、絶対に飲んでくれないんですよね。(除くコーヒー)
色んな意味で、かわいいばあちゃんです。

投稿: mizzie | 2006.08.26 00:46

"全制的施設”という言葉があるのですか。
素晴らしい施設で働いておられるのですね。
Mizzieさんの志が高いから巡り合われたのでしょうね。

介護度5の母も超頑固者です。
ヘルパーさん達は「大変だけれど、可愛いから・・・」と言って下さいます。
でもその頑固さ故に「救急車2台(父と母に)呼ぶ可能性が段々現実のものに・・・」と言われている状況では、可愛いとはなかなか思えませんね。

可愛いさと素直さは、ある意味合い通じるものがあると思うのですが・・・
親の姿は、明日の我が身なので、考えさせられております。

投稿: 優しい光 | 2006.08.27 10:09

優しい光さん>
全制的施設とは、E.ゴッフマンがその著書で用いた言葉で、「多数の類似的境遇にある個々人が、一緒に、相当期間に渡って包括社会から遮断されて、閉鎖的で形式的に管理された日常生活を送る居住と仕事の場所」と定義され、具体的には、精神病院、刑務所、軍隊、修道院などが挙げられています。
(参照;『人間学』栗原彬 編)

要介護者には自ら望んでそうなった人など一人もいない訳で、その、「他人の介助なしには生きられない自分」に対する怒りやとまどい、自己否定が無気力化や問題行動に現れるのだと思いますが、自立していた頃に矜持が高く健やかな人程、その自分に対して怒りを覚えワガママになったり頑固になったりする傾向が強いように思えます。

プロのヘルプマンの一人として、クライアントに無気力感を抱かせる事無く、たとえ「わがまま」や「ガンコ」を経る事があっても、前向きに現実を受容してもらうにはどうすればいいのか、いつも考えています。

投稿: mizzie | 2006.08.27 17:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/8531/11595302

この記事へのトラックバック一覧です: 非服従:

« やっぱりさ、お前等今すぐ独立しろよ | トップページ | 遺伝 »