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2007.01.27

タマにはバイクの話もしよう サーキットライディング編

昨日(書いてる日は同じだけど、更新される日をズラして設定してるので読んでる人にとっては昨日だ)、バイクについての初歩的な物理学的話をした。

今日は、(って言うか書いてる日は同じだけど)もうちょっとレース寄りのバイクの力学的な話をしようと思う。

mizzie流、サーキットの走り方。

基本は単純だ。とにかくアクセルを全開にしている時間を長くする。
レースレベルで、コーナーをライバルよりも1km/h速く走る事はとても難しい。
まず、タイヤのグリップ力には限界がある。タイヤ接地面に掛かる力がそれを超えたら、タイヤは滑って転んでしまう。
コーナリング中は重力、駆動力、遠心力の合力が、タイヤの接地面に掛かっている。体重の軽いライダーがコーナリングスピードを速く出来るのはそのためだ。マン・マシン系の総重量が軽くなる分、同じ速度でも生じる遠心力は小さくなるので、その分速度を上げて遠心力を掛ける事が出来る。タイヤは(ゴムは)路面に押し付けるとグリップ力が上がるので、体重が重い人はその理論をうまく使ってコーナリングスピードを上げている。
トップレベルのレーシングライダーは、重力を前輪に、遠心力を後輪に掛けて後輪を振り出し、旋回性を上げてタイムを稼ぐが、これは全日本でもトップレベルの人達のやる事なので、一般ライダーは絶対にマネしてはいけない。

コーナリングスピードには限界があるから、最高速度からコーナー速度まで減速している時間をとにかく短くする。もう後輪がホンの少しだけ路面から浮く。ってくらいの急減速をする。
T&I英田(現、岡山国際サーキット)のヘアピンとかだと、200km/hから90km/hまで2秒ちょっとで減速する。
(これは僕が現役だった98年の話なので、タイヤとテクノロジーが進歩した今はもっと短いと思う)
で、ブレーキをリリースして寝かし込む間に一気にマシンの向きを変える。

この、”マシンの向きを一気に変える”というのは、安定して走行していたバイクのバランスを崩す事で成り立つ。
前の記事で書いたが、アクセルを開けている間はバイクは安定していてコケない。アクセルを開けて直進している時、バイクは最も安定している。

アクセルをオフにして、急ブレーキを掛けて、そこからブレーキを離した瞬間が最もマシンが不安定になる瞬間だ。停車中は前後輪の重量配分は、理想値は50:50。スポーツモデルのバイクだと49:51とかだ。これが急減速中は、2:98とか1:99とか、世界選手権レベルになると0:100になる瞬間もかなりある。
その、殆ど全ての荷重が前輪に掛かった状態から、ブレーキがリリースされて荷重が後輪に移っていく過程にある時、マシンは最も不安定になる。

その時に、イン側のステップを後輪の接地点目掛けて蹴り込む。
イン側ステップを後輪接地点目掛けて蹴り込む理由は二つ。

一つは、荷重の抜けた後輪をアウト側に蹴り込む事で、後輪の軌跡を前輪の軌跡の外側に出す為。
コンパスで半径の異なる半円を描き、外側に来る線を後輪の軌跡、内側に来る線を前輪の軌跡と過程して、鉛筆でも何でもいいからバイクと仮定してみて欲しい。そこでライダーが狙っているのは、マシンを自転させることだ。
マシンをコーナーに沿って定常円旋回させると、つまりマシンをコーナー線に沿って公転させるだけだと、マシンはだらだらといつまでもコーナリングしていなければならない。
しかし、マシンを自転させると素早くマシンが出口を向くので、コーナーの早いポイントでコーナリングを終えて加速体制に入る事が出来る。
だから、コーナーの走行ライン上でマシンを自転させる為に、後輪の軌跡を前輪の軌跡の外側に持って行く必要がある。

2つ目の理由は、後輪を前輪よりも先に寝かせる為。
バイクがバンクするのは、コーナリングのバランスを取る為だ。
力学的に言うと、遠心力と求心力と重力を釣り合わせる為だ。強い遠心力が掛かると、深くマシンを寝かせなければならない。写真で説明するとこんな感じだ。

Fe21_005_6 


 

 

 

 

 

 

 

 

では、なぜ後輪を前輪よりも先に寝かせるのか?
これの説明は、蝶番があると一番簡単に説明出来る。
バイクがバンクして旋回するシステムを力学的に解説すると、まず最初に、旋回する方向と反対方向に力が掛かる必要がある。これがいわゆる、『逆ハンを切る』という状態だ。旋回方向と反対に操舵角をつけることで、コーナイン側に向かって瞬間的に遠心力が掛かる。つまり、コーナーのイン側に向けて引っ張られる力が掛かる。その力に引かれて、マシンはイン側に倒れる。そこに作用する力は物凄く複雑なんだけど、その遠心力とか求心力とか重力がバランスした所で、マシンの傾きは止まる。だから急な旋回をするほど、瞬間的な最大バンク角は深くなる。
で、話を戻すと、後輪を先に寝かせると、直立した前輪と後輪の角度が、逆ハンを切ったのを同じ状態になる。で、この時前輪を素早くバランスさせてさらに旋回性を上げる為に、イン側ハンドルをほんの少しだけ引くのだが、これもとても危険な技術なので一般レベルではやってはいけない。
よーするに、素早くマシンのバランスを崩して一気に向きを変え、そして素早く旋回を終える為に、イン側のステップを後輪接地点目掛けて蹴り出す(そしてイン側のハンドルバーを引く)のだ。

減速中は、減速以外に力が掛からないように、マシンを直立させた状態でフル制動を掛けているが、ブレーキをリリースした瞬間はまだリアに荷重が戻りきっていないので、ライダーの操作で後輪を外側に振り出す事が出来る。前輪が固定された状態で後輪が外側に振り出されると言う事は、マシンがその軌跡上で自転していると言う事だ。
そうして、マシンがコーナー出口を向いたらマシンを起こしてアクセルを開ける。

一気に減速して、一気に向きを変えて、素早くアクセルを全開にする。
アクセルを開けている時間が長ければ長いほど、1周のラップタイムは速くなる。
力は速度の二乗に比例するから、コーナー速度が10%速くなれば、掛かる遠心力は21%大きくなる。コーナー速度には限界があるのだ。だったら、遠心力なんて余計な力が掛かるコーナリング時間は可能な限り短くして、重力と加速力だけが掛かる時間を長くした方が沢山加速出来る、つまり、コース全体での平均速度が上がる。
それ以前に、全日本選手権のトップレベルになると、新品タイヤが鈴鹿サーキットを45分走ればもうダメ。って位にタイヤを酷使して走っているので、コーナー速度を0.1km/h上げたらタイヤが15周持たないか、コーナー入り口でコケる。
コース1周の平均速度が1km/h上がると、例えば鈴鹿サーキットだとタイムが1秒くらい変わる。でも、コーナーだけで1秒速く走るのは至難の業だ。でも、コーナー立ち上がりで0.1秒速くアクセルを開ける事が出来れば、その0.1秒分余計に加速し続けるので、コース全体での平均速度はかなり上がる。1秒というと一瞬の様に感じるかもしれないが、鈴鹿サーキットはレース専用の125cc(ホンダRSとかヤマハTZとか)だと、一秒で45mくらい走る。つまり、一秒速い奴とは毎周45mずつ離れていくと言うことだ。

だから、少しでも速く走ろうと思ったら速くコーナリングする事よりも速く加速体制に入る方がタイムは詰まるのだ。
だからサーキットライディングでは、一気に減速して一気に旋回して、コーナリングしている時間を可能な限り短くする。

昔、T&Iサーキット(現・岡山国際サーキット)で開催された初心者向けレーシングスクールで、インストラクターとして参加者と一緒にコースを走った時、公道ではそれなりに腕に自信があるらしい、「サーキットで腕試し!」ってやってきた連中よりも、僕は100mくらい奥でブレーキを掛けていた。
別の日、テスト走行に来て、コーナー入り口でフルブレーキングしていた僕を、プライベートテストで来ていた上田昇選手(元世界GPレーサー)が、アクセル全開でブチ抜いていった。

例え3流でも全日本選手権に参戦してるレベルのライダーは、時速200km/hで突っ込んでくるコーナーで、素人さんが「ここがもう限界っ!!」ってブレーキ掛けてる場所から、さらに100m奥までブレーキを我慢する。
世界選手権のトップクラスになると、そこからさらに20m近く奥までアクセル全開で突っ込んで行く。

「アクセル全開の時間を少しでも長くする」と言う、サーキットを速く走る為の基本を恐ろしく高度に洗練させたもの。それがレースレベルのライディングだ。

 

 

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