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2007.04.22

さよなら…

過去記事で僕は、発語なんか殆ど皆無になってて、だけどしつこいくらいの声掛けの末に1年掛けてやっと「…ハ、イ。」の声を引き出したものの、精密検査で消化器に巨大な腫瘍が見付かってしまった利用者様の事を書いた。

あれ以降、その利用者様は日毎に少しづつ体調を悪化させて行き、主治医の所見でも「3月までは持つが、それ以降はいつ逝ってもおかしくない」と診断されていた。

しかしながら、衰弱はしているものの、看護・介護の共闘で少しずつ弱ってはいるが安定している。と言う状況が続いていて、「梅雨までは持つんじゃないのかな?」とか思い始めてもいたが、自力での体動が不可となったその方を、3日前に僕等が体位変換しようとした時、両下肢でベッドと接している部分に壊死が始まっているのを発見、特殊な除圧マットをカットしてその方専用の除圧カバーを作り、壊死の始まった部分の血流を少しでも妨げないようにして、その部分の組織壊死を食い止め、組織再生の肉芽形成がし易くなるようにと病棟長以下、介護病棟職員が工夫を凝らして処置を行った。

『創傷ケア院』でもある我が職場、自己治癒能力の低下した90歳を超えた高齢者の仙骨部に発生した、骨まで見えてるような酷いじょく創も治してしまうくらいで、じょく創治癒にはそれなりのノウハウと経験が蓄積されている。
組織壊死以外には衰弱がゆっくりと進行しているしか目立った症状の無いこの方は、他の要介護度5の重介護者(要介護度8とか9が欲しいくらいだ)と目立った変わりは無く、いつもと変わり無いケアに『2時間毎の体位変換』が加わって、そして2ヶ月もすれば組織壊死も止まって、またいつものルーティン化したケアに戻る、そんな感じだった。

翌日、オイラは公休日。もう書かないけどいつものような充実したオフを過ごし、翌朝はメンタルエナジーフルチャージで出勤した。

事務室でタイムカードを押して、更衣室で制服に着替えて、エレベーターに乗って『〇階・介護病棟』のボタンを押す。

 

チン! 「ドアが、開きます」

ドアがゆっくりと開いて、僕はエレベーターから廊下へと出た。
僕の斜め前の病室から、移動式担架に乗せられ、銀糸で刺繍されたブランケットに包まれ顔に白布を被せられた小柄な人が、黒のフォーマルスーツを着た男に担架を押されて運び出されてきた。2日前に僕等がじょく創処置の為に除圧マットを加工した、その人だった。
日勤出勤直後と言うのは、一日の中で一番忙しい時間帯だが、少し早目に出勤していた僕は、早出出勤だった他の職員と共に、死亡退院した患者が運び出されるエレベーターの前に並んでその方を見送った。

 

病状が比較的安定していた事と、一般病棟に移ると介護保険が使えない為にオムツ代等には保険適用が受けられず診療報酬が取れないので、生活保護の医療扶助適用を受けていたその方を、一般病棟に移すと赤字になるという経営的事情で、
(全部自民党と公明党が決めた『医療制度改革』のせいだ!!)
介護病棟で最後の時を迎えたその方だが、僕が最後にその人に関わった3日前まで、こちらのケアを過酷にするような事は何一つ無く、
重症患者には心電図等のモニターが常時繋がれていて、呼吸停止に至る直前の兆候が現れたらすぐに対処出来るのだが、それまでの症状がとても安定していたので、モニター類は接続されてはいなかった。そして臨終のその時も、4時の巡視を終えてから6時の巡視に周った時には、既に呼吸を停止して冷たくなっていたらしい。

経済的事情と、自民党と公明党が決めたこの国の新しい医療制度により、専門的・集中的な医療処置が受けられなかったこの方は、安定期の人が長期的なケアを受ける介護病棟には相応しくない症状を抱えながら、最後の瞬間まで僕等の手を煩わせる事が無かった。
発語も無く、意思表示も皆無だった、だた呼吸し、栄養摂取し、排泄するだけだったこの人は、その、生命維持以外の人間としての機能の殆ど全てを失ってしまったその体で、最後の瞬間まで僕等の手を煩わせる事の無いようにと。気を使い続けていてくれた。

死亡退院患者が乗るエレベーター、その扉が静かに閉まって行くのを見送りながら、僕にはそう思えて仕方が無かった。
その時は、死亡退院した患者を見送るいつもと同じく、極めてフラットな感情で深々と頭を下げた後、いつものように仕事に掛かった僕だけど、

こうしてその時の事を書いている今、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じている。

彼女は静かに旅立って行った。
飢えも、寒さも、怒りも、憎しみも、痛みも、悲しみも、孤独も疎外も無い、貪欲な守銭奴も冷酷な抑圧者もいない、自民党も公明党もいない平和で穏やかな世界へ。 

さよなら。

僕等、介護職員に最後の瞬間まで気を遣い続けてくれた、自民党と公明党の悪政の犠牲となった、軍国主義国家だった日本政府の失策で国中を焼かれたこの国が、奇跡の復興を遂げるのを底辺で支え続けて来た・・・さん。

あなたの冥福を心からお祈り申し上げます。

 

今日はちょっと暗いけど、、、

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