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2007.04.23

モラトリアム

先日、就職が決まらなくて悩んでいるという知人と会う機会があった。

迷惑施設を押し付ける為に地方を干上がらせている自民党政権のせいで、高知には20代がなりたいと思える仕事や、未来に希望を抱ける様な仕事が殆ど無い。

その僕が会ったと言う人は、母の知り合いである25歳の女性で、職安に言って仕事先を紹介されたらしいのだが、しかしそうやって紹介された仕事と言うのが、月給15万前後、昇給、賞与なし。何て言うヒドイ仕事だし、その上、仕事との適正は、どう考えてもその人には合っていない。
しかしながら、今の高知にはその方の様な20代の求職者に、職安が紹介出来る仕事なんてそんなのしかないのだ。求職者数が求人数を圧倒的に上回っている現状では、職種を選り好みしている余裕なんて高知の若年求職者には無い。高知で若年者を積極的に募集しているところなんて、自衛隊とソープランドとデリバリー-ヘルスとイメージクラブくらいのものだ。

(あと有資格者なら介護職ね。)

ただ僕の観点から見た場合、就職が決まらない事にはその方にも落ち度があると言わざるを得ない。
なんとなく高校を卒業したその方は、なんとなく、市内のとある専門学校に行き、生きるスキルにはならない資格を取得して卒業したものの、そんな資格が結びつく仕事などどこにも無く、フリーターとして収入を得ながらなんとなく就職活動を続けているうちにここまで来てしまったようだった。
その方を良く知る母の話では、その方の両親もそんな生き方をしてきた人らしく、なんとなく流れに乗って人生を送っていたら、高度成長の流れに乗って仕事が決まり、そのままその仕事でキャリアを重ね、郊外に一戸建て住宅を持ち、高知では中流と言える程度の暮らしをしているらしかった。

子供は親の思い通りには育たない。親の通りに育つ

この言葉は真実である。
なんとなく流れに乗って人生を送り、高度成長に乗って中流の暮らしを得た両親に育てられたその女性は、『自分の人生としっかり向き合う』と言うロールモデルを身近に見る事が無いまま成長した。そうして義務教育を終えた後、周りの流れに乗って進学校でもスポーツ校でも底辺校でも無い普通の高校に進み、苛烈な受験戦争に追われる事も無く、自分の人生を賭ける価値があると思えるような対象に出会える事も無く、なんとなくおもしろそうで楽しそうで簡単に入学出来そうな専門学校に進み、高校よりも遥かに規制の少ない環境で自由を謳歌して卒業し、生きる為に有用な知識もスキルも何一つ身に付ける事も無いまま、20歳の若さで社会に放り出された。

何となく流れに身を任せていたら、特に知識やスキルが無くても年収300万程度は稼げた幸福な時代は、80年代後半に変容を余儀なくされ、90年代のどこかで完全に終焉した。今は、人生のごく早期に自分の人生を賭ける価値のある対象に出会えた幸福な人(”時間的優位”は、人生戦略においては強力なアドヴァンテージとなる)か、強力なコネクションを持った家庭に生まれるか、物凄い努力を重ねるか、九十九里浜でゴールデンリングを拾うくらいの確立の幸運に恵まれるかした人しか、”経済的にはそこそこに幸福”な人生を歩む事がとても難しい時代になろうとしている。裕福でない家庭に生まれた地方出身者には、モラトリアムを受け入れてくれる余地など何処にも無いのだ。

それなのに、

地方都市に行けば、自分の人生と向き合う事から逃げる若者達を受け入れる(そしてその若者達を駄目にする)教育商人達が溢れている。”生きるスキル”には殆ど役立たないその手の学校で2年間を過ごした若者達は、「使い捨て歯車」として企業家に低賃金で酷使され、パーツとしての商品価値が低下する30代後半辺りを過ぎた辺りで、その歳で知識もスキルも無い求職者に残された、さらに低賃金の仕事への転職を余儀なくされる。特別な訓練を必要とする専門技術や、高等な教育を必要としないそれらの職種には、毎年次々と『モラトリアム受け入れ専門学校』を卒業してくる若い人材が供給されるのだ。特に専門知識も高等教育も必要としない、”健康であれば誰でも出来る仕事”なら、過酷な労働環境への耐久力が高い若い人材を次々と使いまわした方が効率良く稼げる。資本主義社会とはそういった哲学が重視されて運営される社会だ。

「明日のビルゲイツを目指そう!」

の宣伝文句に乗せられてコンピューター専門学校に行ったって、せいぜい使い捨てプログラマーになれるくらいで、ソフト開発者になんかまず間違いなくなれない。
ソフト開発者になろう。なんて本気で考えている連中は、大学で情報科学(情報技術ではない)や理論科学を4年間みっちりと学び、その後コンピューター開発の最先端であるアメリカの大学院に留学し、そこで世界中から集まった秀才達と共に知識を研鑽し合いながら、その研究対象を先鋭化・高度化させ、日々研究に没頭しているような連中の、さらに一握りだけがソフト開発で身を為すのだ。
コンピューター専門学校で一日8時間パソコンを学んで、学校が終われば、高校よりも自由度が増えて行動範囲が広まった世界で、遊び歩いているような連中が近付ける世界ではない。

現実世界には、ネバーランドなんか何処にも無いのだ。

誰だって、どんなに逃げたって、どこまで逃げたって、現実の人生と向き合わなければならない時がやってくる。そして逃げていた時間が長いほど、向き合った時に選べる選択肢は狭められている。グローバリゼーションと新自由主義のおかげで、ただでさえ社会全体が不公平で不公正な世界になってしまった(最も、それを選んだのは選挙に行かなかったか、行っても自民党・公明党に投票した若者達自身なのだが…)のだ。モラトリアムに逃げ込むと言うのはそのまま、資本家達にとっての『使い捨てパーツ』になる事を選ぶ事を意味する。

21世紀前半の日本社会は、既にそんな社会になっている。

 

 

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コメント

まったくもってシュールなことですがその通り!私はかなり子供の頃から自分の夢、というかなりたいもの、目指すことが常にあったので、高校時代に付き合っていた彼氏が「将来なりたいものなんか考えたこともない。大学は偏差値で決める」と言われものすごく愕然としました(即効バイバイしました)。
うちの両親は・・・と考えてみると、確かに幼い頃から目標付けを明確にさせられてきたような。なんとなく日々を生きることは許されませんでしたねぇ。いいかげんなことしてたら鉄拳制裁は当たり前でした。
そんな両親にはずいぶん反抗しましたし、いまでもあまり良い感情はないのですが、物事をうのみにすることなく、自分の目で確かめ、常に目標を持って生きることを教えてくれたことには感謝しています。
今回の記事で書かれている人のような人は、きっとごまんといるのでしょう。そしてなんとなくココまで来てしまった自分に違和感を持つこともなく流動的につまらない人生を過ごす人も多い中、その方はそんな自分の生き方に疑問をもつことができた。それだけでもその方にとっては幸せなことだったのではないでしょうか。いい仕事なんてないとは思いますが、心がけしだいですかねぇ。

投稿: hana | 2007.04.23 07:02

子は、親の通りに育つ、かぁ……
わしが、再就職の道として介護職を選んだのも、
医師の父と元看護師の母を見ていてのことだったのでしょうか。
普段、あんまり意識していないんですけれどね。
子供の頃は、医者になりたかったですが……
思春期には、夜勤から帰る母の
「昨夜は2人死んだわー!!」
の声で目を覚まし、働く人間は24時間営業でアタリマエだと
思っていたところ、確かにありますなー。
だから施設勤務希望なのかも。
ま、在宅の仕事を選ばない理由の一つに、
わしは料理が下手くそ、というのがありますが……とほほ。

父がわしのことを妙に買ってくれているのが分かって、
少々照れくさいです。母も、より高みを目指しなさい……と
言っていたなぁ。出来るんだろうか。
東大医学部卒の父のDNAは、わしの中に、確かにあるんだろうか……??

投稿: ゆらら | 2007.04.23 14:24

hanaさん>
hanaさんのブログからいつも感じる、クリティカルシンカーのそれは、子供時代に叩き込まれたものだったんですね。
今のこの国で、勉強に没頭できる環境にないのに、「やりたいこと」にも出会えなかったとしたら、それは「幸福とは呼べない人生」に直結しそうな気もします。

ゆららさん>
子供を見れば、その親は大体想像がつきます。「負けた!親の顔が見てみたいよ。」って凄い人もいれば、「…お里が知れるぜ…。」って奴もいますが、そのベースラインは大抵、子供時代の育てられ方で決まってるんですよね。

投稿: mizzie | 2007.04.24 20:13

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