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2007.05.06

やつらの口車に乗ってはいけない

すこし前(先月です)、経済モノのTV番組で、大量退職する団塊世代の退職金の使い道として、

『日本版REIT』

について特集が組まれていた。
日本経済新聞がメインスポンサーであるその番組では、日本版REITの投資先としての有用性と、将来の予測リターンについての楽観的予想が、眉目秀麗な女性キャスターと、番組にゲストとして呼ばれた投資信託会社の投資顧問によって語られていた。

クリティカルシンキングスキルを鍛える材料として、この『TV番組絶賛。日本版REIT』は使えるかもしれないが、マスメディアの情報はいつも・全て正しいと本気で考えている高度成長世代の方々のうち、それなりの数が、日本版REITに貴重な退職金をつぎ込もうとしているのではないのだろうか?

そもそも、日本版REITとは何ぞや?

まず最初に、REITとは、『Real Estate Investment Trust』の頭文字を略号にしたもので、その意味は『不動産投資信託』である。

例えば、そうやって投資信託で出資者を募って、集めた資金で不動産に投資する。収益物件を建てたり、オフィスビルを建てたり、リゾート地に投資したりする。そうやって投資した不動産が順調に収益を上げれば、その収益を出資者に配当金として配当する。通常の収益物件なら入居率9割で年率7%くらいの収益は期待出来るから、5千万円投資すれば、毎年350万円程度の配当が受け取れる仕組みだ。
景気が上昇すると賃貸価格は上昇するので、収益率はさらに上がる。REITは、景気停滞期に今後の発展が見込める地域に投資するのならば、はっきり言って美味しい投資商品だ。ただ、そう言った時期はリスクがその分大きくなるが株式市場の方がより大きなリターンが期待出来るので、安定志向な人以外にとって、REITはあまり魅力のある投資商品ではない。

僕が「07年の今、TVが日本版REITを賞賛するのは、クリティカルシンキングスキルを鍛える教材に使える。」と言ったのは何故か?

ここで僕が言いたいポイントは3つ。
1)日本版REITは、本当に魅力ある投資商品なのか?
2)何故今、日本版REITを勧めるのか?

3)誰が、日本版REITを勧めているのか?
である。

ではまず、1)について考えてみよう。
REITは、景気拡大期には魅力的な投資商品だが、景気後退期には拡大期の魅力だった事と全く逆の現象が起きる。その理屈は90年代のバブル崩壊直後を考えれば判りやすい。当時、地価は高騰し、不動産の価格は跳ね上がっていた。1億円の価値しか無い物件に、10億円以上の値段が付いていたのだ。しかし不動産は時価で取引きするモノなので、例えその不動産には1億円の価値しか無かったとしても、時価が10億円ならその不動産を買うには10億円が必要なのだ。仮にREITでファンドマネージャーがその物件に投資したとしよう。10億円で購入した物件で'年率7%の利益を上げようと思ったら、賃貸料をそれに見合った金額に設定にしなければならない。
しかし、景気後退期にそんな事をしても、借り手がいなければ空き室が増えて稼働率が下がり収益が減る。回転率を上げるには賃貸料を下げるしかないが、そうすると稼働率を上げてもやはり収益は減る。その物件が妥当な価値である1億円まで値落ちした場合、それに見合う賃貸料設定にしていたとしたら、最初の投資資金に対する収益率は0.7%だ。どっかの国債でももうちょっと利率がいい。
さらにヒドいのは、10億円の元手も、その物件の妥当価格である1億円まで低下していると言う事だ。
つまり、投資資金が10分の1になっていると言う事だ。
「予測収益年間350万」に釣られて5000万の退職金を突っ込んでいたとしたら、収益は僅か35万しか上がらず、元手も500万に減額。つまり4500万円も損をした事になるのだ。

例えは少し極端だが、REITにはそんなリスクがある。
ファンドマネージャーは分散投資で多少のリスクヘッジはしているだろうが、相場全体が下がってしまえば、ヘッジでカヴァー出来る範囲は当然超える。TVで勧めていたのは『日本版REIT』だったので、日本の不動産価格が下落した場合、番組を見て投資した投資者は全員損をする事になるだろう。

 

では、2)と3)について考えてみよう。

何故今、日本版REITを、誰が勧めているのだろうか?
僕が見たTV番組は、経済関係の番組で、主な視聴者はITバブル以降に増えた個人投資家だと思われる。
そこで個人投資家達に情報を授けているのは、投資信託会社や証券会社に所属するプロの投資家達だ。
そのプロの投資家達が、何故今シロウト投資家に日本版REITを勧めるのか?
そもそも、日本版REITは本当に今が『買い』なのか?

少し冷静になって考えてみて欲しい。
バブル後の「失われた10年」で、東証株価は1万円を切る所まで下落した。
地価なんか、ピーク時から比べたらとんでもないレベルまで下落した。

確かに、その時期だったら日本版REITは『買い』だっただろう。実際その時期、東京の有望物件を海外のハゲタカファンドの連中は買い叩いて・買い漁っていた。奴らは既に今回の景気拡大で大儲けしている。
だいたい、プロの連中がシロウトに「今が買いですよ~。ここはまだまだ上がりますよ~。」なんて言う時は、自分達が十分に儲けた後だ。80年代後半のバブルの時もそうだったし、90年代後半のアメリカ「ドットコム」バブルの時もそうだった。そうして自分達が十分に儲けた後で、シロウト達を市場に呼び込む。そうしないと、自分達が売り抜ける事が出来ないからだ。

プロの投資家達は、ある商品や市場で儲けても、それが『下げ』局面に入るのを敏感に察知して、まだ上がり続けているのに自分達は売り抜けて、次の高成長が期待出来る別の市場に投資する。そうやって常に高成長を続ける市場や相場に投資し続ける事で、高配当を維持させる。
しかしながら、自分達が売り抜ける為には、高値で買ってくれる、つまり貧乏クジを引いてくれる投資者がいないと高値で売り抜ける事は出来ない。
市場ってのはある意味「ババ抜き」の様な側面があるのだけれど、プロ達はいつ・誰がそのババを引くのか、ビクビクしながらマーケットに参加していた。


しかし連中はある時、「おい、いい手があるぞ。あのシロウトどもが貯めてる老後の資金とやらを出させようぜ。」ってやり始めた。自分達が吊り上げた市場に庶民を参入させ、そうやって庶民に貧乏クジを引かせて、「奴等がこつこつ貯めた老後の資金は、俺達プロがまとめてごっそりいただくぜ。」って寸法だ。

話が少し逸れた。
日本の不動産投資は有望な投資商品なのか?
この問いについて考える時、
日本の景気は今後も拡大を続けるのか?
をベースラインに考える必要がある。

過去数十ヶ月と言う長期に渡って、日本経済は拡大を続けてきた。2001年頃から投資している連中は随分と儲けた事だろう。巷にはそうやって富を得た者のストーリーがごろごろしている。

では、それは今後も安定して続くのか?

僕はそうとは思わない。
毎年1回は成田ー羽田を陸路で移動する僕だけれど、この3月にシスコからの帰りで成田ー羽田間をバス移動している時、過去数年間で感じた活気を都心湾岸部から感じる事は出来なかった。京葉浜地区の不動産実勢価格がどうなっているのかは判らないが、それがその不動産の本来の価値から離れ始めていた場合、不動産相場は今が天井だと推測出来る。もしそうなら、投資家連中はその相場から売り抜ける事を考えているハズだ。そして自分達が売り抜ける為には、「この相場は今が”買い”ですよ~」とアナウンスする必要がある。無知なシロウト投資家を呼び込んで、そいつらにババを引かせなければならなからだ。

僕が見たTV番組では、日本の不動産に見込める投資価値として、日本の不動産投資信託には株や普通の投資信託には無い安定性と、今後も高収益が見込めるポテンシャルがあって、今投資すれば今後も高配当が期待出来ると言われていた。
それを言っているのは誰だ?
そう言った信託を運営しているファンドマネージャーや、プロの投資家である証券会社の投資顧問達だ。そして、その番組はそう言った証券会社や投資信託会社の出す金で製作・放送されている。

日銀がゼロ金利を解除したとは言え、まだ日本の銀行金利はとんでもなく低い。退職金を銀行に預けたって、利子生活なんかとてもじゃないが出来ない。だから、今後大量退職する団塊世代達でそれなりの数の人達が、退職金の運用先を探しているはずだ。

まだ日本は深刻な景気後退局面には入っていないし、早い段階で投資した連中は少しくらいは儲かるかもしれない。でも、投資信託っていうのは短期で売ったり買ったりしてると手数料で赤字が出たり儲けが消えたりする。さらに、長期的に見ると今が天井に近い価格をつけている可能性を否定する事は出来ない。そうすると、今投資して長期に持ち続けてる連中や、すぐに投資してそいつらが儲けてるのを見て後から参入した連中は損をする事になる。ではトクをするのは誰だ?


そいつらに高値で売りつけた、プロの投資家達やファンドマネージャー達だ。

2001年に一旦落ち込んだ後、世界経済は順調に成長を続けている。停滞していた日本経済もどん底からは何とか脱却して、東証株価で倍近くになるぐらい回復した。だけど、
世界経済を支えるアメリカ経済は破綻寸前だ。BRICsの成長で世界経済に占めるアメリカの割合は下がったけれど、僕は世界経済が強力に成長する要因はあまり無いと考えている。もし僕と似た事をプロの連中が考えていた場合、あいつらは売り抜けるタイミングを計っているはずだ。
プロが一斉に逃げ出すと相場がクラッシュして世界同時不況に発展しかねないので、すこしずつ売り抜けるだろう。そうすると暴落はしないから、一般の個人投資家達は市場の楽観予想に従って投資活動を継続させるだろう。その結果がどうなるのかは、この記事を最初から読んできた人にはもう判ると思う。

ネット株で小金を稼いでいるオイラだけど、今は、投資資金を引き上げるタイミングを計ってもいる。低収益だけど安定収益の見込める商品に買い換えるつもりだ。

 

 

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