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2007.06.24

マンツーマンでも足りない

僕が働いている介護療養施設には今、49人の入所者がいる。

空きベッドが増えたから49人になったのであって、満床だった頃には58人いた。
その入所者数に対して、職員数は介護職員が15人、看護師が15人だ。

だがしかし、

これは所属している職員の総数であって、実際に職務に当たる職員は、日勤帯だと介護職員が10人、看護師が4人。少ない日(日曜日など)だと、介護職員はたったの5人だ。

最大で58人の入所者を、この数の職員で対処しなければならない。看護師も含めると職員一人に対する入所者数は約6.4人なので、法的基準である『職員1人に対して利用者7人まで』と言う国の基準は満たしているだけでなく、職員数が多い曜日は職員一人当たりの利用者数が約3.8人である我が職場は、国の機能評価でとても高い評価を受けてもいるくらいだ。

じゃあ、僕の職場では良質の介護・看護・医療が提供出来ているのかと言うと、そんな事は全く無い。怒濤の勢いで押し寄せるルーティンワークと、こちらの都合なんかお構いなしに次々と発生する突発事態の対処だけで精一杯で、一人一人とじっくり係わっている余裕なんかどこにも無い。少なくとも、勤続18ヶ月の僕にはあった事が無い。
夜勤時なんかもっと酷い。
58人の利用者を、介護・看護あわせて3人で見るのだ。これで全ての利用者のニーズを満たして満足の行く介護・看護を提供しようなんて、どだい無理な話と言うものだ。

しかし、僕の職場は政府が決めた基準を満たしている。
つまり、政府は、厚生労働省は、自民党・公明党は、高級老人ホームに入れないような中流以下の国民の老後なんてものは、この程度で十分だと言っているのだ。そして選挙に行かない日本人と、自民党・公明党を支持する超金持ちではない日本人は、自分達の老後はそれでいいと承認しているのだ。

選挙に行かない and/or 自民党・公明党を支持する金持ちではない日本人がそれでいいと認める「職員一人当たり利用者7人以下」の療養介護施設、そこで僕等は、看護師達はやれバイタルチェックだ、ほら吸痰だ、さあ内服注入だ、ほらじょく創処置だ、採血だ、検尿だ、看護記録書け、医師と連絡しろ、なんて業務に追われている。僕等介護職員だって、ほら食事介助だ、口腔ケアだ、排泄誘導だ、オムツ交換だ、保清だ、更衣だ、入浴介助だ、水分補給だ、体位変換だ、洗濯だ、掃除だ、リハビリ室への送迎だ、他職種への連絡だ、レクリエーションの企画・計画・準備だ、家族との連絡だ、物品や器材・機材の保守点検補充管理で一日中走り回っている。

この山の様なルーティンワークをこなしながら、次々と発生する突発事態に対処しているのだ。

政府は2011年で医療介護施設の全廃を決定したので、僕等の職場でも新たな入所者は余程の理由が無い限り受け入れない方針にして、2011年に備える方向性で経営を行っているらしいのだが、それでも、49人の利用者全てのニーズ全てに答えるのはとても難しい。時によっては、重要度の低い幾つかの要望は放置せざるを得ない。一人で4人を見ている事になる我が職場だが、その4人がこちらの都合のいいように順番に要望を出してくれる事なんか無いのだ。

相手はこちらの都合なんかお構いなしで、突然体の痛みを訴えたり、熱発(熱を出す事)したり、容態悪化したり、嘔吐したり、血便・血尿が出たり、ベッドから転落したりする。それらの突発自体が数人同時に起こったりもする。そもそも医療介護施設に来る人なんて、医療必要度の高い、要介護度の高い人ばかりなのだ。呼吸器と循環器の機能が極端に低下して、酸素吸入無しには生命の維持が出来なくなった所まで容態が悪化した利用者を「この人も今日明日が山だね」なんて職員同士で話しながら、ちょっとでも手が空けば巡視して容態急変の兆しが無いか観察しながら、山の様なルーティンと次々と起こる突発事態に対処しているのだ。

脳梗塞後遺症で下半身が麻痺してしまった大柄な利用者さんなんて、体位変換も入浴介助も更衣もオムツ交換も絶対に一人では出来ない。
医療必要度の高い重症患者なんて、看護師・介護員が常時その人に掛かりっきりで、看護師が処置している僅かな間に、担当の介護職員は他の利用者を見ているなんて状況だ。

医療介護施設では、一日の仕事を終えた職員は余程運がいい時以外は皆、燃え尽きたかのようにクタクタになって家路に付いている。
食事、排泄、更衣、保清、移動が全介助となってしまった要介護者に対して、せめて必要最低限のケアだけでもしようと思っても、とてもじゃないが人員が足らないのだ。

生活全介助な人をケアしようと思ったら、マンツーマンでも足らないのだ。

でも、政府は「職員一人当たり4人で充分」と言っている。
そしてそれは、国民からの支持を得てさえもいる。

 

僕は時々、この国とそれを支持する多数派国民が本当にイヤになる。

 

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