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2007.08.22

NST失敗例

「・・・ったくもうっ!○×さんマジ重いって・・・。」

○×さんを僕と一緒に体位変換させていた同僚が、小声でつぶやく。

「○×さん、今ウチにいる女性患者の中では最大ですからね。」

体重測定係でもある僕はそう答えながら、側臥位維持の為に背中にクッションを当てる。

「○×さん、体感の重さは男性含めてもウチで一番重いわよ絶対。オムツカバーLサイズでこんなになる人いないし、首から下が全麻痺だから協力動作も取れないし。この人を2時間おきに体位変換させてるワーカーの身にもなって欲しいわよまったく。」

 

そうなのだ。
創傷ケア院でもある我が職場、組織が壊死して骨まで見えているような、ステージⅣまで進行したようなじょく創も治してしまうのだが、それには蓄積されたノウハウや処置技術、栄養指導も確かに貢献しているのだが、コマメにケアするワーカーがいなければ、絶対に成り立たないと思う。
一般病棟では体位変換は看護師が行うのだが、介護病棟ではそれらは全てケアワーカーである僕らが行う。除圧の仕方を工夫したり、クッションのあて方を工夫したり、それらについて理学療法士や看護師の指導を受ける事もあるが、実際に2時間おきにそれを行うのは僕達ケアワーカーだ。

「でも○×さん、入院してきた頃と比べても随分と肥りましたよね。」

「mizzieもそう思うでしょ?アンタ体重測定係でしょ?実数はどうなってるの?」

「測定が60日毎に切り替わったでしょ?だから今月分のデータは無いんですけど、先月アタマ測定時で、5月から比較して2kg増加してます。女性では一番重いです。」

「それ絶対、次計ったらNST(栄養サポートチーム)かけなきゃいけないくらい肥ってるわよ絶対。次計ったら絶対に★△さん(男性)抜いて病棟最大になってるはず!見てよこのお腹と太もも。○×さん肥り過ぎよ。ちょっとダイエットしなきゃね。」

○×さんのお腹を軽くポンポンと叩きながら、同僚が○×さんに囁く。

「肥りすぎよ。って言われても、○×さん寝たきりだし、食事は経管栄養で強制的に胃袋に流し込まれて、肥りすぎって言われたら絶対に「肥らせたのアンタ達でしょ!」って怒りますよ。7月時点で2kg増で報告してたのに、NST何もしなかったんですか?」

「してないんじゃないの?だって○×さん、今も一日1200kcal行ってるらしいわよ。」

「1200kcal!?健康体の僕でも入院中の総摂取カロリー1200だったんですよ。そんな○×さんなんて筋肉も無くて基礎代謝低いはずなのに、そりゃこれで一日1200も行けば肥りますよ。」

「ワーカーも看護師も報告上げてんのに変化無しでしょ。こんなに肥らされて、心臓にも負担掛かるし何してんのかしらねあの人達。」

「脂肪肝になっちゃいますよ。」

 

栄養素の種類と摂取量を細かくコントロールして、ステージⅣのじょく創も治癒させてしまう当院のNSTだけど、何も健康的問題の無い人についての対処法が確立されていないのか、必須カロリー量と摂取カロリー量の計算が上手くいかなかったのか、他にも何か理由はあったのか、その真相は一介のケアワーカーに過ぎない僕にはわからないんだけど、

16名在籍するケアワーカーのうち、一名が来月で腰痛を理由に退職する事になり、ベテランの中から3人が酷い腰痛の症状を訴えている。この仕事に就くようになってから、集中的・意識的に腰部筋を鍛えていた僕は何とか持ちこたえているが、もう一人の男性職員以外の全員が、この方の体位変換には悪戦苦闘している。

当の○×さんは、強制的に毎日1200kcalの流動食を胃袋に流し込まれ、脂肪細胞をパンパンに膨らませて、内臓に負担を掛けながら、日々を暮らしている。

この○×さんに関して言えば、それ(NSTの立てた計画)は絶対に失敗だと思う。

 

 

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コメント

主題とはちょっとズレますが、女性にとって体重はかなりシビアな問題・・・利用者さんの体重を「重すぎ」だの「太りすぎ」だの本人の前で言うのはいくらなんでもマズイのではないかと。それに介護ブログでこういう記事を書いてしまうと・・・(以下略)。私がこの方の家族だったら、職員の接遇態度についてクレーム入れますね。
でも実際、残念ながらこういう利用者さんっていますよね。

投稿: hana | 2007.08.22 07:35

hanaさん>
NSTの事だけでなく、接遇に関しての厳しいコメントを頂き、本当に有難うございます。
実際の話、ここで僕等がしていた会話は、介護の現場で利用者さんの前では絶対にしてはいけない種類のもので、でもそれは実際に起きてた事なのであえて、身内の、自分の恥を晒して事実を告発しました。
これで誰もこの件について触れてくれなかったら少し困る所だったのですが、キチンと「それは絶対にいけない事ですよ!」って言って下さって、本当に有難う御座います。

ただ、今読み返してみたら書き方に少し問題があるな、とも思ったんですけど、hanaさん、介護職にある第三者の視点から見て、「ここは変えた方が…」とか、「もうこの記事は削除した方がいいんじゃない?」ってのがあったら教えてくださいね。

投稿: mizzie | 2007.08.23 02:30

遅れてきて、hanaさんのご指摘とは違ったレスを書いてしまうわしをお許しください☆

いやぁ、実習中は、ブログ巡りが出来なかったもので……

わし、社会福祉実習で特養に行って、初めて“重たい利用者さん”の移乗・体位変換を経験したのですが(ちなみに、太られた女性ではなく、大柄な男性の利用者さんです)、大変でしたー!!
自分がこんなに力がないとは……。
痩せてはいるものの、身長159cmとそれなりにガタイがいいので、職員さんに、
「意外と力がないのね、利用者さんが不安になっちゃう」
とご指摘をいただきました。

そこで!!身体を鍛えよう、と思い至ったわけです。特に腰。
今のところ、ダンベルとウォーキングをやっているのですが、mizzieさんオススメの腰部鍛錬法って、どんなのがありますか??

投稿: ゆらら | 2007.08.27 22:04

ゆららさん>
腰部筋強化については、今月号のライディングスポーツと言う2輪レース雑誌の『医学で勝てるか』と言う連載コラムがこれについて詳細に触れられていましたので、本屋さんとかで立ち読みでもしてみて下さい。そこで触れられている”腰痛体操”は、腰部筋強化に僕も現役時代に取り入れていました。効果絶大です。

投稿: mizzie | 2007.08.28 11:37

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