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2007.12.15

回復

「はい、半纏着るよ。そっち腕通してね。」

車イスに座ったPさん(男性・60代後半)に半纏を着せようと、僕は右袖口をPさんの肩口から前に大きく開いた。右麻痺のPさん、ぎこちない動きだが、ゆっくりと自分の右腕を半纏に通してゆく。

「1年前はピクリとも動かなかったのに、Pさん右腕、自分で袖通せるようになったねぇ。」

「へいうおういあっあぁ~。」

Pさん、僕からの声掛けにそう答え、そして目を細めて感慨深げにうなずいている。目には薄っすらと涙を浮かべてすらいる。
Pさんは2年前に脳梗塞で倒れ、右半身麻痺となって僕の職場に入院する事になった。当初は右半身は全く動かず、そうなってしまった自分への苛立ちから、女性職員に対して攻撃的な問題行動があったりもしたのだが、PT(理学療法士)、OT(作業療法士)、ST(言語聴覚士)が地道なリハビリを続け、病棟看護師・介護士もそれを援助して、こわばった肉の棒だったPさんの右上腕は、動きはぎこちないながらも意思の通った運動器官へと変化した。

病棟に来たばかりの頃は、自暴自棄になって全てに対して受動的というか、投げやりで意欲の欠ける態度だったPさんは、全く動かなかった右腕が少しではあるが自発的に動かせるようになった辺りからリハビリにも積極的になって、そこから急速に右上腕の機能は回復し、今では自力で歯磨きが出来るまでになった。

高齢者が脳梗塞等で麻痺になってしまった場合、リハビリをしても効果は薄いと言う刷り込みが多くの人にはあるんだと思う。「やっても無駄」と言う暗黙の合意があったからこそ、コイズミジュンイチロウwith自民党の守銭奴な中間達が、医療制度改革と言う御旗の元で、リハビリの保険適用は180日で打ち切り。なんて決めたんだと思う。

でも、Pさんはリハビリでの保険適用が打ち切られる直前辺りから回復の兆しを見せ始め、保険適用打ち切り期限の6ヶ月が過ぎた辺りから、その機能を二次曲線的に回復させていった。

Pさんの例は、特別な例外には成り得ないと僕は考える。

初めはやる気なんかなかった患者が、回復の兆しが見えた辺りで俄然やる気を起こして、献身的で熱心に機能回復訓練に参加するようになって、加速度的に回復速度が上がっていく。と言うのは、決して珍しくも何ともないと思う。脳梗塞等の脳機能障害で身体機能を失ってしまった場合、回復の兆しが見えるまでは、患者が効果があるのかも無いのかも判らない様な行為に、献身的にコミットしていくのはとても難しい。そして僕達医療・福祉の業界に身を置く者達は、

治る意思のある者には幾らでも力を貸せるけど、

治る意思の無い者には何も出来ないのだ。

脳梗塞等で麻痺となり要介護となったような人に、回復訓練に意欲的にコミットさせるのはとても難しい。だけど難しいと言っても、自分の未来に光明を見出した者は全力でコミットしてくるのだ。そしてそうなった患者はほぼ全ての場合において、その機能に何らかの変化を見せる。

Pさんは人間の回復機能と言うものの持つ、『無限の可能性』と言うものを僕達に示してくれた。回復時間に個人差があるとは言え、治る意思のある患者の機能は必ず回復する。

 

 

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