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2008.10.26

複雑

次の職場が決まったので、今の職場に退職願を提出し、何の問題も無く受理され、退職日も決定した。
先週末の職場会で他の職員にも僕の退職が告知され、僕の希望にほぼ沿った形での転職決定で、職場の同僚から羨ましがられたり、ネットを駆使して転職活動していた僕にそのノウハウを訊ねられたりしながら、最近は過ごしている。

そんな昨夜の夜勤。

準夜帯の業務も滞りなく終了した朝4時、最後の小休憩で一緒に働いていた超ベテランのワーカーさん、勤続10年のナースさんと3人で、お茶を飲みながら仕事の話をしていた時、その話題が出た。

「でさー、mizzieも来月で退職なんだからさぁ、ここの勤務体制とか雇用者の劣悪待遇とか、もう労基にチクっちゃってよ。」

「そうよ。こんなに人手不足なのに全然新規採用しないし、サービス残業しないと業務がこなせなくて、イージスさんなんかフツーに90分前出勤の60分遅退社。みんなだって日勤で8時半出勤して、退社は7時とかフツーじゃない。でも残業手当\1もつかないのよ。異常よ。」

「一般病棟も外来もそんな感じで、3階病棟なんか退職希望ナースが・・・人もいて、そんなに辞められたら人員不足廃業しなきゃいけなくなるから、・・・師長、必死で慰留してるらしいわよ。」

 

ってこんな感じで、ベテラン二人組から「もう辞めちまうんだから労基にチクれ!」コールが鳴り響いていたのだ。

確かに、経営がうまくいっている大病院以外の日本中の殆どの医療機関は、現場の看護師の過重労働で成り立っているのが現実だ。「看護婦は8K」なんて昔は言われていたが、21世紀の日本の医療機関で働く看護師達の労働状況は、8Kの前に”超”っていう形容詞が必要なくらいになっている。

超・汚い

超・危険

超・キツイ

超・休暇が取れない

超・給料が安い

超・・・

って感じだ。そしてそれは、僕達介護士のそれも、似たようなものだ。

今の日本の医療・福祉は、現場で働く医師・看護師・介護士の自己犠牲で成り立っているようなものなのだ。もし日本中の医師・看護師・介護士が、国家公務員Ⅰ種を持つ厚生労働省官僚みたいな仕事をしたら、1週間も経たないうちに、日本中の医療機関・福祉施設が機能不全を起こしてしまうにちがいない。

ただ労働時間が長くなっているだけだったり、雇用契約書に書かれた休日日数が取得出来ないだけならまだいい。僕等の、看護師・介護士の過重労働は、その過重労働・超過勤務に対する報酬がゼロなのだ。

例えば典型的な早出出勤日。

定時に出勤なんかしていたら、とてもじゃないが仕事が回らない。「君、チームワークって言葉知ってる?」って尋ねたくなるようなごく少数の奇特な職員を除けば、ほぼ全てのナース、ワーカーが定時の30分前には出勤している。しかし、早出勤務の職員が定時に帰られるなんて事はごく稀だ。大抵は30分。多い時は120分から180分近い残業を強いられる事になる。120分残業をすれば3000円以上の超過勤務手当が出るが、超過勤務届けを出すと職長会で労務管理責任者が激しく叱責されるんだそうで、病棟内には、「管理責任者が認めた時しか超勤届は出せない」と言った無語のプレッシャーがある。経理が社食で、「先月、赤字が2000万超えてたのよ・・・。」なんて囁いてのを聞いてもいるので、出したくても出せない。って事情も判っているだけに、そして全従業員にキチンと残業手当を払ったら、コイズミの財政改革で診療報酬と薬価を切り下げられまくって青息吐息の、経営母体の医療法人それ自体が倒産し兼ねないので、言いたくても言わないで、皆がじっと現状の劣悪待遇に耐えているのだ。さらに、在職したまま労基にチクってヘタにそれがバレてしまうと、今の職場に居辛くなるのも判っているから、もうすぐ退社で後顧に憂いの無い僕に、現状を労基にチクって現場職員の窮状を改善させろ。と言っているのだ。

労基にチクる事で、残った仲間達の待遇が改善されるのならば、それはやるだけの価値があると思う。しかし今の僕にとって、それをするのはちょっと複雑な心境でもある。

僕が現状を労基に告発して監査に入らせたら、間違いなく人事や労務、経営者は指導を受ける。それはそれで別にどうでもいいのだが、僕が告発した事が知れたら(そしてそれは恐らく知られる)、病棟師長の立場が苦しくなってしまうかもしれないのだ。
僕は師長には恩義がある。資格取得をバックアップして頂き、そして僕をここまで育ててくれて、その他、陰に日向に僕を支えてくれていたので、その師長に恩を仇で返すような事なんかとてもじゃないが出来ないししたくない。サービス残業と公休強制返上無しには業務が回らないような、超・劣悪待遇に置かれている同僚達の待遇を改善させてやりたいのも事実なのだが、これで上が仕事を全部下に押し付けてラクをしているというのならまた話も違ってくるが、我が介護病棟で最も長時間働いているのは、病棟師長と、看護主任のイージスさんなのだ。

これが不当解雇での退職なら、何の躊躇も無く労基や介護ユニオンに駆け込む所だが、それとは正反対の円満退職であるオイラには、世話になった中間管理職に後足で砂をかけるような事は出来ない。
しかし、劣悪待遇にある同僚達の境遇を何とかしてやりたいとも思う。

その心境は複雑だ。

 

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