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2010.11.13

尖閣漁船衝突事件~シナリオを書いたのは誰だ?~

    尖閣諸島沖での、中国漁船と海上保安庁巡視船の衝突事件。
事件から2ヶ月が過ぎて、この国のメディアはその報道を海保職員による衝突ビデオ流出にフォーカスして、政府の対応を批判したり、義憤に駆られて映像をYoutubeで公開した、海保職員に同情する市民の声を取り上げたりしている。
    今後検察は恐らく、映像を流出させた海保職員を起訴する方向で取り調べ等を進めるのだろうが、あの海保職員を公務員の守秘義務違反で起訴するには、一部議員に公開していた映像、しかも海保内部では共有資料とされていた映像が『機密扱い』だったと証明する事は難しいだろうし、本人の自白以外に彼が映像を流出させたと言う決定的な証拠が皆無の現状では、証拠不十分で不起訴処分となるか、起訴されても「疑わしきは罰せず」の司法によって(もし市民から選ばれた裁判員による裁判員裁判となれば確実に)、無罪放免となるだろう。
    そこまで考えた時にふと思った事がある。あの海保職員は本当に、義憤に駆られて映像を公開したのだろうか?と。もちろん、最前線で国家と国民の利益を守るべく命がけで働いている自分達の奮闘が、政府の手によって闇に葬り去られようとしていた事に対する、憤りはあっただろう。しかし僕は思う。彼は、その憤りと使命感を利用されたのではないのだろうか?と。
  この、『尖閣諸島沖中国漁船衝突事件』は、色んな条件がそろい過ぎている時に起きた事件なのだが、その、正に時を得たとしか思えない時に事件が起きている事実を考えた場合、この事件には、裏でシナリオを書いた誰か(或いは組織や国家機関)がいたのではないのか?そんな気がしてしまうのだ。
  少し冷静になって考えてみて欲しい。この漁船衝突事件で、実は日本は何も失ってはいないのだ。政府民主党は対応のマズさを自民党を筆頭とした野党、TV、新聞等のメディア、そしてかなりの数の国民から批判されてはいるが、尖閣諸島領有権問題それ自体には何も変化は無く、それどころか、以前よりも強固に日本の領有権を主張しろ!と言う圧倒的多数国民の支持まで取り付けてしまった。
  これで、対露シフトから緩やかに対北朝鮮・中国シフトに移りつつあった海上自衛隊の艦隊編成が、大きな反対も無くさらに進むのは明らかだし、日中国交正常化以来、『何事も穏便に後回し』だった自民党政権の後始末をさせられている格好の民主党だが、こと外交に関しては、独自の外交政策を確率する必要性・重要性を認識しただろう。
  そう。今回の事件で、結果的に最も得るものが大きかったのは、実は日本なのだ。中国は船長が拘束された直後、日本政府に対して抗議のコメントを出しつつも、まだこの段階では強硬姿勢を取る素振りを見せていなかった。これが事なかれ主義の自民党政権時代や、どちらかと言えば親中な小沢元党首が党中枢で君臨していた頃ならば、日本は批難のコメントと共に船長を中国へ強制送還し、中国政府に厳重な対処と再発防止を求めてお終いだっただろう。
  ところが外交はシロウトの管政権、中国との外交上のパイプが無い事も重なって、中国政府からの「穏便に済ませようや」のサインを見過ごしてしまった。本当に見過ごしたのか意図的に見過ごしたのかは判らないが、船長拘束から拘留期限延長、国内で起訴の構え、と、どんどん対応をエスカレートさせて行った。
  その正当性を堂々と主張し続けて来たのは民主党でも自民党でも公明党でも無く、日本共産党だけだった。と言うのはある意味皮肉ではあるのだが、歴史的観点から、国際法的観点からも、尖閣諸島が日本の領土である事は間違いの無い事実なので、法的には政府の対応は230%正しいのだが、中国との外交問題を考えた場合、これは中国にとってとんでもなく都合が悪かった。中国も早い段階で使えるパイプは全て使って、管政権の意図とこの問題の落とし所を探り、お互いの国家としての威信が傷付かないギリギリの線を落とし所にして、事態の収拾を図るべきだったのだろうが、恐らく中国政府首脳部は、民主党の外交能力を身誤った。過大評価し過ぎていたのだろう。
この件では、悪いのは中国漁船なのは明らかなのだが、中国政府としてはそれを認めてしまうのは内政的にとても都合が悪い。って言うか認められなかったのだ。
  ワイロまみれの国家官僚や、拡大を続ける経済格差などで、中国国内は不満と怨嗟の声に満ちていて、いつ暴発するか判らないような状況。
  それまで汚く罵り続けて来た日本相手に中国政府が引いた。なんて事にでもなれば、それをきっかけに国民の政府への不満が爆発しかねない。今の中国は自分がどんなに悪くても、引く事が出来ない状況下にいるのだ。そんな状況なのだから、民主党が引いてくれない以上、中国も対応をさらに厳しくするしかない。結局、民主党は中国に対し、中国の対日レアアース輸出停止と言う、資源を外交上の武器として使うと言う手段に訴える所まで追い詰めてしまった。
  レアアース輸出停止は日本の輸出産業にとってはダメージなので、経団連とかは恐らく民主党に「何とかしろ!」って圧力を掛けていたんだと思う。だから、禁輸になった思えばあっと言う間に船長が釈放されたのだ。
そこだけを見ると、日本が中国の圧力に屈した様に見えるし、実際そうなのだが、圧力に屈した形の日本、実は何も失っていないのは冒頭に書いた通りだ。レアアース禁輸で一番痛手を負ったのは実は、当の中国政府なのだ。
  昨今の先進国の産業はそのかなりの部分を、レアアースを使ったハイテク製品に依存しているのだが、この、中国政府による外交の武器としてのレアアース禁輸は、昨今急速に台頭し国際社会での影響力を強めてきた中国に対し、先進国を含めた世界中に強い警戒心を励起させてしまった。この事件の後、世界中の先進国は中国以外の国からのレアアース調達先確保に走っているし、採掘コストが合わないからと長い事閉鎖されていたカリフォルニア州にある鉱山も、日本との共同による採掘を再開させる事が決定した。レアアースのリサイクル技術の開発や、レアアースを使わない製品の開発も今後さらに進むだろう。中東がオイルショック以後石油を戦略物資として使いづらくなった様に、今後の中国はレアアースを外交上の戦略物資としては、以前の様に強力な使い方が出来なくなるだろう。
  そしてさらに、中国に対する警戒心はオバマ大統領の対中政策まで変えてしまって、歴史的に中国寄りの政策を打ち出す米民主党政権なのに、オバマ大統領、「尖閣諸島は日米安全保障条約の適用対象である」と発言してしまった。
  中国にとってこれは厳しい。尖閣は日本の領土であると日本が主張しているのだから、仮に中国軍が尖閣に軍隊を送った場合、管総理は国土を守る。と言う理由で堂々と自衛隊に「防衛出動」が命令出来るのだが、その場合、安保条約に基づいて米軍が行動を共にする事になるのだ。つまり、尖閣への軍隊の進駐は、中国にとってアメリカに宣戦布告するのと同義になってしまうのだ。イラクとアフガンで手一杯のアメリカがどれだけの兵力を出せるのか疑問ではあるが、中国にとって尖閣諸島が、第七艦隊(と自衛艦隊)と総力戦を演じてでも奪う価値のある島だとは思えない。
  中国は国内に対しては、魚釣島(尖閣諸島)は中国領だ。と言い続けるしかないのだろうが、中国政府としては調査船を送るとか漁船に違法操業をさせるのが関の山で、(警察や海保のような)治安部隊を常駐させたり、軍隊を派遣する事はほぼムリ。な状況になってしまった。韓国が竹島でやっているような、実効支配が出来なくなってしまったのだ。
  この漁船衝突事件とその後の対応で、中国は何一つ得る物が無いまま、他の貿易相手国に警戒心を励起させ、外交上使えるカードを一つ失ってしまった。それどころか中国は外交カードを一つ失っただけでなく、その対応のせいでアメリカ大統領にはっきりと、「尖閣は日本の領土だ。」と言わせてしまったのだ。中国政府は中国の漁師達に対し、「尖閣でどんどん操業しろ」と煽っていた節もあるのだが、もしそうなら中国は、自分で掘った墓穴に自分で落ちたと言う事になる。管政権が外交オンチだった為に、中国は貧乏クジを引かされた格好になっているのだ。
  今後、自分達の不満のはけ口として中国漁民達が尖閣で違法操業をする事は増えるかもしれないが、中国政府はせいぜいそれを放置するのが関の山で、国家として尖閣に手を出す事は出来ないだろう。
  日本では、自衛隊の東シナ海シフトはさらに進むだろうし、無責任な愛国者達は勇ましく右翼的な言説で、この国の軍備がさらに進むように声を上げ続けるだろう。憲法9条を変えろ。とか、非核三原則を破棄しろ。とか、武器輸出を解禁しろ。とか、そう言った類の事だ。
  野党になった自民党は、民主党の無策ぶりを徹底的に追及し、次の衆院選での政権返り咲きを狙うだろう。
  右翼や保守の連中、軍産複合体が主張する『中国脅威論』はさらに支持を広げ、オバマ大統領の発言で管政権に借りを作った形になるアメリカは、見返りとして普天間基地移設問題の早期決着を要求してくるだろう。今度の知事選で仲井間知事が再選すれば、ほぼ間違いなく辺野古はMV-22オスプレイを運用する、米海兵隊の前線基地になる。
 
 
 
今回の衝突事件、最もトクをしたのは誰だ?
今回の事件はそいつらが、自分達の為に書いたシナリオに沿って進めていたのではないのか?

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コメント

誰が得をしたか。。
なかなか難しい問題ですね。。

ただ、、情報を流出させた海保職員が起訴されるのであれば、
一部委員会でのみ公開された映像を事細かに話していた議員も同罪な気がします。

また、レアアースに関してはトヨタなどは今回の問題が出るより以前から備蓄をし始めており、
短期的には実はたいした問題ではなかったですし、
使用済み機器からの抽出法もかなりの段階まで研究されています。
実用化にはまだコストがかかるようですが。。
いずれにしても、レアアース、レアメタルに関してはそう遠くない将来完全に中国依存ではなくなるでしょうし、
今回の件により、そのリサイクル法等の研究も加速されるかもしれません。

中国のようにやんちゃな国は、真綿で締め付けるようにじわりじわりと外堀を埋めて行って、
気付いたら動けなくなっていた。。。って具合にしていくのが良いのかなと思います。


ちなみに。。。核実験を再開した米国。。首長さんよ、ノーベル平和賞およびそれに付随した賞金等々、変換しなされ!

投稿: ハルシオ | 2010.11.13 09:31

>ハルシオさん

>情報を流出させた海保職員が起訴されるのであれば、一部委員会でのみ公開された映像を事細かに話していた議員も同罪な気がします。

そうなんですよ。だから、あれを『公務委員の守秘義務違反』で起訴するのは難しいと思いますし、仮にムリヤリ起訴したとしても、有罪とするのはほぼ不可能だと思います。

今度の事件で、レアアースはその供給量のほぼ全てを中国が握っていて、そしてそこには巨大な”チャイナリスク”がある事を世界中が認識してしまった訳で、
レアアース、レアメタルのリサイクル法研究とかも、一気に進むと思います。中国は確実に、外交カードを一つ失ったんです。

オバマ大統領の核実験再開のニュースは、僕をひどくがっかりさせてしまいました。
ただこれは、今現在、医療制度改革法案で守銭奴の米保険業界と闘っているオバマ大統領は、今この時期に、軍産複合体まで敵に回す事が出来なかったんだと思います。恐らく彼は、現有する核兵器の性能維持の為の動きを停める事はしないけれどその代り、核兵器の総量を減らせて行くと言う現実的選択をしたんだと思います。

投稿: mizzie | 2010.11.13 14:36

情報を流出させた海保職員は逮捕しないそうです。

投稿: 香川県民 | 2010.11.15 16:53

>香川県民さん

みたいですね。逮捕しても有罪に出来る可能性は低いし、国民感情とか考えたら民主党にとってマイナスが大きすぎますもの。

投稿: mizzie | 2010.11.18 01:25

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